脱力する瞬間はふと訪れる

会社に入ってからというもの、いつも、つい肩に力が入ってしまい、とうとう体が変形してしまった。猫背の典型で、肩が内側に入り込み、先日見に行った上野動物公園で威嚇していたゴリラのように力んだ状態。

寝る時でさえそうで、朝起きて体がコチコチに固まっているのに気付き、自分を哀れむ毎日である。

そんな私が今日ふと脱力した瞬間があり、あぁ、なるほど、と思った。それは田村正和がセリフとして呟いた言葉である。「そうか、君はもういないんだ」

故人をふいに思い、その瞬間に永遠に失ってしまった事実を突き付けられて、いなくなってしまったことに、また新鮮な寂しさを感じる。そんな瞬間に口を衝いて出る言葉だ。

演技とは、およそ私の生活とは縁遠く、意識することがない。従い、演技がうまいとはどういうことか、演技を磨くとはどういうことか皆目見当はつかない。だがしかし、私のカチコチに固まった体の力をも解いてしまった田村正和の演技とは何かそういう力を持っているのだろう、などとCMを見て思いを巡らせた。