なんとなくそのままにしておく

家の窓は、外に向いてる面が全面ガラス張りである。耐震性が疑われる。

見事な一枚ガラスの一つに、大きな手形が、クリアな視界を遮るようにくっきり付いている。

明らかに女の手ではない大きな手形。仲介人であるDamian君が残したものか、彼がブラインドをひいた時に残したものか。

ずっと前から、それがあることに気付いているが、まったく拭く気にならない。

Damianが残したものなら(いかにも物事に頓着しないDamianならやりそうだ)、ここを出る迄付けておくか、という気持ちになる。

彼が残したものならば(いかにも不器用な奴ならやりそうだ)、ここを出る迄残しておくか、という気持ちになる。

いずれにせよ、遠い異国で仮住まいをしている、染まりきらない自分の象徴。